理事長挨拶

2021年5月30日に一般社団法人日本小児看護学会理事長を拝命いたしました,塩飽 仁(しわく ひとし)です。歴史ある学会の舵取り役を引き受けることになり,決意を新たにして学会の発展と子どものために尽くす所存です。どうぞよろしくお願いいたします。
本学会は1991年に発足した日本小児看護研究学会を経て,1999年に日本小児看護学会に名称を変更し,2013年に一般社団法人となりました。この30年間に日本の子どもを取り巻く環境は刻々と変わってきています。
2008年に日本の人口は減少に転じました。子どもの人口が年々減少しているなかで,現在,日本では6から7人に1人の子どもは相対的貧困にあり,OECD加盟国の中で最悪の水準です。2020年に自殺した児童や生徒は415人であり,小中学生の不登校は19万人以上と,いずれも過去最多となっています。一方で,幼少期からインターネット環境で情報収集したりSNSで交流したりするのがあたりまえのZ世代が台頭しています。このように,30年前とはまったくと言っていいほど子どもの育ちと暮らしの枠組みが変わってしまいました。これらと併行・連動しながら,小児看護の現場や基礎・現任教育,法律や制度なども様々な変遷をたどってきています。
そこに2019年から始まったCOVID-19によるパンデミックが加わり,いま世の中は劇的に変貌している途上にあります。
おそらくこの先の数年で,さらに小児看護の現場とその環境は大きく変化することでしょう。きたるべき未来を担う子どもたちを見守り,支え,ともに歩んでいくために,今起きている変化を見据え,さらに未来を予見して組織の力を高め,あるいは再構成していくミッションが私たちには課せられていると思います。
本学会の特徴は,小児看護の現場での活動の質を着実に向上していくことと,その基盤となり次のステージへの発展を先導する学術的成果の確実な積み重ねを促進すること,この二点に集約されます。
本学会に参加される方々は,個々人の関心や活動の場,目的などに応じて,自らの意向で,これら双方の特徴に即した役割を,バランスを保ちながら両立させ,最終的には同じ志を持つ仲間にその成果を還元していくというミッションを共有することを目指していると思います。その明快な意思が本学会を成り立たせ,子どもの健康と福祉に貢献するという目的の実現につながるのだと考えています。
本学会が担う役割は重要で多大ですが,皆様のご協力のもとに少しずつ着実に達成していけるよう努めてまいります。なにとぞ本学会へのご参加とご理解,ご支援をお願い申し上げます。
一般社団法人日本小児看護学会
理事長 塩飽 仁
(東北大学大学院医学系研究科保健学専攻家族支援看護学講座小児看護学分野)